函館高専地域連携協力会

2019.12.02

生産システム工学科濵克己先生の研究室を訪ねて

函館高専新聞局3年 池田 知尋

 函館高専の先生方へ我々新聞局員が取材をして紹介する連載。記念すべき第一回目は生産システム工学科機械コース教授の浜克己先生に話を聞いた。浜先生は函館高専に就任して35年目であり、本校の先生方の中で一番長い。また、函館高専の卒業生であり私たち学生の大先輩にあたる。そんな浜先生に現在行っている研究の内容や学生当時の生活について語ってもらった。

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 「昔の高専は今よりのんびりしていたように思う」と懐かしんだ浜先生は、学生時代は機械工学科(現在の生産システム工学科機械コース)に在籍していた。父がものづくりの仕事をしていた影響で機械や制御に興味を持ったのがきっかけで高専に入学したのだという。今こそ少ない留年生が多い年で全校で100人ほどいた時代だったが、学生総会の議長や学校祭の実行委員など積極的な行事参加や部活動をする一方、試験前は特に勉強にも取り組んだ。その後本校を卒業し、長岡技術科学大学へ一期生として入学した。「その当時と比べて今の学生は求められることが多くて大変そう」と浜先生は言う。今の高専生は社会から期待されている部分が多く、国際化も求められていることから高度で多岐に渡るものが求められているように感じるという浜先生は、そんな今の学生を「1人の教育者として支えたい」と語る。長岡技科大では高専入学時から興味があった機械制御について学び、配属した研究室で今現在の研究内容へ繋がる医用工学(メディカルエンジニアリング)に出会う。その後は一度医用工学を離れ一般企業に3年間勤め、函館高専から声がかかったことをきっかけに本校の教員となった。もともと教師に憧れがあったこともあり地元へ帰ってきた浜先生だが、始めは医用工学の研究はしなかったという。「何か地元の函館のために研究をしたい」と考え始め、10数年前から学生時代に学んだ医用工学を思い出し福祉介護に関する研究を始めたのだということだ。

 浜先生は現在、医用工学に基づいた、主に2つの研究をしている。1つは車椅子や歩行器、リハビリ支援機器などの機器開発である。その中で一番長く研究をしているものは「人混みで安心して移動できるセンサ付自動運転車椅子」だ。車椅子の利用者にとって傾斜のある道の通過は困難であり、また1人で移動できる電動車椅子は操作が難しく操作ミス1つで事故に繋がり大変危険である。この状況を改善するため、危険を察知するセンサを取り付け例えば正面からの歩行者を自動で避けるなど、安全に利用できる車椅子の開発を進めている。また、車椅子利用者がボウリングをする際にタイヤ部分が邪魔になることなどを考慮したボウリング用車椅子の開発も行っている。その他にも脳梗塞等による脊髄損傷で手のリハビリが必要になった方へ向けて開発しているリハビリ支援機器は、手を握る動作よりも、開く動作のリハビリが重視されており、使用者が自宅で利用できるよう小型・軽量化を目指しゴムや樹脂で作られ、また新しい空気圧駆動技術が用いられている。

自立行動支援用車椅子の開発

在宅用手指リハビリ支援機器の開発

 もう1つの研究内容は障がいを持った人のコミュニケーションについてである。健常者と同じようにコミュニケーションをとれない人用に、視線や口の動きを察知する機器や、画面上の文字を視線でたどってもらい、その文字を会話相手へ伝える機器の開発をしたいという。どちらの研究も、全ての人に安全な生活を送ってもらいたいという思いがベースとなっている。「障がいを持った人も、健常者と同じように社会参加してほしい」と浜先生は語る。自らが開発した機器が生きがいに繋がればなおうれしいのだという。

 今後の研究について浜先生は「開発中の機器を商品として使えるような状態にすることが目標」と語った。現在開発している機器はまだテスト段階である。それらの機器を実際必要としている方に使用してもらうためには、機器をもっと小型化し携帯しやすくすることなどさらなる改善を行う必要がある。「企業などと連携をとり、技術移転などをして商品化できればいいなと思う」と浜先生は笑顔で語った。